なぜ貴方はWEBサイトを作るのか?

なぜ貴方はWEBサイトを作るのか?

半生を振り返りながら今の仕事を考える記事をつらつらと書いてみた。
ほぼ推敲なしでの一発記述。読みにくい点があれば、ご容赦願いたい。

キャリア的な振り返り

私の新卒からのキャリアは小売りでスタートした。6年半もいたわけだが、最後の店では、部門社員は自分だけ、パートさんやバイトが何人かみたいになる。日額の部門売り上げは40万円くらいだったか、土日になると60万。月間売上は約1500万円、多い時で2000万円超えるイメージ。会社にとって、大きくはないが、小さすぎることもない数字だ。
ちょうど、この記事を書いている今時期の12月はクリスマス商戦~歳末商戦で、イベント当日(クリスマス前の土日とか、晦日あたり)は日々の3倍くらいの売上となったりする。
バイトの人件費、仕入れコントロール、天候との戦い、値下げ時期のタイミング、廃棄率コントロールなど、1円単位で計算して計算して、会社に残るのはせいぜい2~3%である。
年商2億円を社員一人+パートさん含めて10名弱でようやく年間500万円くらいが残る計算となる。500万円くらいなんて競合が出来ただけで吹っ飛んでしまう金額である。

小売りは小売りで面白さは強い。毎日がジェットコースターに乗っている気分だが、POSデータでリアルタイムで売上金額を把握できるのがよい。
売り場と在庫スペースを見ただけで、ある程度、頭の中で金額が出てくる。あとは売るだけだ。だけど、頭に描いていた完璧なストーリーも急な天候不良、ゲリラ雷雨なんかあれば一瞬で崩れる。

値下げの嵐をしてでも廃棄が出来るだけ無いようにしたい。本当に棄てちゃうからだ。
急な大雨で客足が途絶え、翌日廃棄の山をみると本当に悲しい。
とはいえ、値下げするということは利益が全く無くなるということでもある。値下げ商品しか売れなくなったら店はあっさり潰れる。利益はいつもギリギリの設定だ。
逆に台風なんか来ると前日はかなりの売れ行きとなる。売り場の商品が間に合わない。でも台風が上陸した瞬間、一切合切売れない。お客さんなんて来れるわけもない。でも商品は来ちゃう。大雨の中、荷物を運び入れる。でもそんな努力も意味はなさない。
リアル店舗の場合、お客さんに来ていただけないと、そもそもがスタートしない。

広告代理店への転職

そんな日々の忙しさの中で、ふともうある程度技術が身についたから別の仕事をしてみようなんて思う。体力勝負の毎日。ダメならダメで業界に戻ってくればいい。スキルはある。
不退転の決意とは毛色が違うが、だからこその異業種チャレンジ。
ダメなら戻る場所があるからこその全力投球。前進してから考えればいいというスタンス。
そして、私はWEB広告代理店へと転職した。

WEB広告代理店に転職してみると、小売り時代に会社に残してきた年間500万円なんて金は、広告費として使うとなれば、すぐである。ちょっと本気で広告を出そうとすると、100万円が数秒で消える。
大手代理店だと、月額100万円の広告主は新人の練習台となる、なんて都市伝説のような話があるが、聞いてみると真実らしい。
1円単位で物事を考えてきた小売り時代と全く違う。1クリック100円、200円…業界によっては1クリックだけで5000円が無くなる!

小さい頃、桃鉄というすごろくゲームが好きだったのだが、あのゲームをやった後の感覚に近い。数百万がはした金なのだ。
目の前に札束を詰んだうえでやっているならともかくとして、管理しているのは単なる数字である。ECショップだとしても人が入ってくるのが見えるわけでもない、クリック1、そのために使った広告費100円だけが、ブラウザの管理画面に記録されるのみ。
かなり味気ない。

それでも、小売り時代の感覚が残っているため、使用金額が増えてくると焦りを覚える。なぜ売れないのか、ほんとうに誘導しているのか。いや、そもそも競合がクリックしているだけなんじゃないか、みたいな気持ちになる。

そんな中、暫く見ていると、コンバージョンに1がつく。売上発生。
発生したキーワードは?売れた商品は何?分析に走る、なるほど、これが売れるのかなんて、一件一件確認したい!

でも、WEB広告代理店は営業会社でもある。そんな管理画面を見続けている余裕なんて無い。一件でも多く電話しなくては・・・

当時、私が所属していた会社は営業(電話~訪問)・運用・改善・報告、場合によってはお金の取り立てまで自分でやる。ノルマを達成していれば時間の使い方はある程度自由になる。営業ノルマさえ達成しているならば、電話などしなくてもいい。広告の管理画面に一日つきっきりでも構わないし、レポート報告に丸々一日かけてもいいのだ。
現に私は、月に一度、群馬県のほうにレポート報告に行っていた。片道2時間半、3時間打ち合わせしての直行直帰だ。まあ、そのおかげでその前の一週間の勤務時間は異常事態を迎えたりはする。当時、自動生成レポートもなかったので、半分手作業で作る。
これが時間がかかる!
あまりの報告量にお手上げとなり、他の人にやってもらった時期もあるが、ミスが多く、確認作業をしていた深夜二時に「ふざけんじゃねえぞ!」と叫んだことも有る。(そのころには社内に私しかいないわけで独り言にしかならないんだけど)
分析と運用をさせてくれ、レポート作成なんて意味ない事柄で貴重な時間を奪わないでくれ、なんて当時は思ったものである。

営業している広告代理店は、運用に避ける時間が無いからダメという風にいう人もいる。
まあ、半分事実ではあるが、とはいえ、自分で開拓した案件は思い入れが違う。
WEB広告に於いて、この思い入れがあるかどうかで実績は大きく変わる。
テクニックも必要だが、熱量はもっと重要だと思っている。
運用だけで熱意を持てる人は、逆に凄いと思う、希少種である。
私はできるだけ広告主と話し合い、方向性と内容を詰めていきたいタイプだ。
非効率かもしれないが、そちらのほうが結果として成果に近づくと信じているし、経験的にもそうなっている。

とはいえ、とはいえだ。広告代理店もビジネスだ。クライアントも大事だが自社の利益はもっと大事。営業ノルマを達成しない限りは、営業すべし!なのだ。
まあ、そういうこともあり、クライアントに寄り添うか、代理店に寄り添うかで広告運用者は板挟みになるわけである。
これは私が低めの予算案件ばかり獲得していたからでもあるのだが・・・

お陰で受注件数は常に月間トップを走り続けたが、低い予算をひたすら回して回し続けるスタイルで、忙しさだけが増えていくという状況になっていった。
低い予算の場合、微調整が当時は重要だった。1円単位の調整は小売り時代の考えに近く、運用スタイルがはまったのだが、それを実践するとなると営業する時間が無い。

営業する時間がなければ、ノルマ達成もできない。で困った結果、既存のお客さんのご紹介に頼るようになっていった。
『運用する時間を確保するために、案件紹介してください!』
案件を人質にした酷い交渉であるが、有難いことで結構紹介いただいた。今でも感謝しかない。

そういうこともあり、WEB広告代理店としてのキャリアがようやく固まりだわけだが、リスティング広告運用だけしていることへの疑問が湧いていた。
当時からアクセス解析ツール、Googleアナリティクスを使いながら、データ追跡をしていたが、リスティング広告だけで終わるべきなのかということである。

結局、広告依頼をしていただけるのは、お問い合わせ、リード獲得のためである。であれば、リスティング広告にだけに縛られるのは絶対にオカシイ。
SNS広告でもいいし、コンサルもありだし、バナー広告などのクリエイティブの追求でもいい。結果としてWEB集客でリードを獲得できればいい。それを丸ごとできる部署を作りたかったのだが、形が見えてきたところで計画はとん挫した。

内部事情も大きく絡んだりするため詳しくは言えないが、私の部下を社内で引き抜こうとする動きが発覚。そんなことをする会社の体制に違和感を感じて柱として期待していた部下が転職してしまったことで、計画も中途半端な最後を迎えてしまった。

あと1年あれば・・・と思うと今でも悔しいが、そういう理不尽なことも社会人は多いのである。

事業会社のマーケティング責任者として着任

さて、部下の転職に後押しされるような形で(実際、転職を煽られた)、事業会社に転職を決める。WEB広告代理店側ではやれなかった仕事を欲してのことである。
内定を貰った企業。事業自体は面白い、ただWEBサイトがあまりにも酷い・・・という会社。
リスティング広告も打っているというが、これでは問合せなんて取れるわけがない。

ハッキリ言ってWEB戦略もなく迷子状態に見える。
広告代理店側の目線からいえば地雷に近い存在である。

迷いに迷ったが、自分で全部改善すればいい!なんて思い、転職を確定。
WEBマーケの責任者として着任して過去のデータを見るわけだが・・・。

まあ、やはりというかデータがほぼ無い。
アナリティクス設定が全くされていない、過去の問い合わせ実績、歯抜け状態。

データを分析するためのデータを取得するための作業から開始である。

着任後最初にしたことは、リスティング広告の停止と、アクセス解析ツールであるGoogleアナリティクスの正常な設定へ。問合せをちゃんと記録するような現場の構築。

また、WEBサイトのリニューアルを控えており、制作会社は決まっていて、内容の提案が行われている時の着任だった。
提案書を見てみると、制作会社の提案があまりにも酷い。

実際にWEB制作会社に「実績がでるように貴方のセンスで!」みたいなことを言ってしまっていたようだ。よって、WEB制作会社のやりたいような提案である。制作会社にとって作りやすく、高利益が残るサイト。

今のWEBサイトが酷いよね、というのが依頼者側が理解できているのは良いとして、今のサイトを焼き増しするだけのサイトに意味はあるのだろうか。

これについてだが、ハッキリ言ってしまうと、WEB制作会社側はそんなに悪くない。丸投げしている依頼者側が全面的に悪い。

中身のないサイトの包装紙を変えて、新しいパッケージにしようという。
やりたい内容も正確に伝えられず、わが社の魅力が伝わるように~なんて具体性もなく提案させる。
外からみたって分かる範囲は限られている。そうしたら今あるサイトを薄く伸ばして、「見た目だけ良いペラッペラなサイト」が出来上がって当然としかいえない。

なんでサイト作るのさ

そもそもがリニューアルを何故するのか、という視点がない。

リニューアルを含めて、WEBサイトを何のために作るのか?という問いに答えられていない。

ここで再度問おう、「なぜサイトを作るのか?」

・・

・・・

どうだろうか?
まあ、簡単な答えとしては、「お客さんを獲得するため」かと思う。

お客さんを獲得するため、見た目をきれいにする。それは重要だ。
だが中身がなければどうにもならない。

見た目はそれなりにキレイなレストランだが、入ってみたら、メニューもない。
椅子もない。接客スタッフも来る気配もない・・・ ような店で誰が食事をとろうと思うのか。完全セルフサービス。このままだと料理までお客さんにさせて、お金だけは通常通り請求されるなんてことも有りえるかもしれない。
まさに、注文の多い料理店である。

さて、もう一度聞こう、WEBサイトは何のために作るのか?

お客さんが迷わず食べたいものを提供できる環境を作るのが目的ではないだろうか。

綺麗で見た目の良い外観を作るよりも先に、

・店に入りやすいデザイン
・分かりやすい導線
・素早く丁寧な接客
・分かりやすいメニュー

お勧めとシェフのこだわりが分かれば猶更良い。

そういう前提のもと、自分が提案できるメニューを見つめなおす。
蕎麦のような、早くて安くて美味しいものを提供するならば、立ち食いでも良いな、となったりする。ここで実は椅子が不要かもと気付いたりする。

逆に、長時間、ゆったりとした時間を味わってほしいのならば、
お店全体の雰囲気を作りこむべきである。
それはメニューの作り方、間接照明、接客の仕方、料理の出す順番・・・色々ある。
高級感は一朝一夕では作れない。とことん考え抜く必要性がある。

決して外観を綺麗にすることだけが答えではない。
それは一要素にすぎない。

しかしして、大体のサイトにおいて、残念ながら
リニューアルは外壁塗装でしかない。

一番重要なお客さんの「ニーズへの対応」が抜けている。

さらに問題なことがある。

WEBサイトにおいて、どんなに綺麗なサイトであったとして見られなきゃ意味が無い。
集客戦略の無いサイトは、人里離れたところにレストランを作るようなもので、誰も来れない、誰にも存在を知られていない。

そんな状況でも、リスティング広告のようなWEB広告をばらまくと、集客がスタートするので実に便利だ。
リスティング広告は、お腹が空いただろう人の前で待つ送迎バスのようなものなので実績も出やすい。故に、サイトに大きな問題が無いという前提にはなるが、基本的にリスティング広告で問合せ獲得ができないわけがない。

そういう考えの中で定義するならば、レストランの立地を良くしようとするのがSEO。
人の行き来が多ければ、実際、レストランに入ってもらえる可能性が高くなるため、この施策もかかせない。

よってサイトを作るときは、
まず、どんなメニューを提案するのか、売れるためにはどうすればいいのか。
競合はどんな接客をしている?

そして何よりお客さんのニーズは何なのか!

我々のメニューはお客さんのニーズに沿ったものか。

ニーズを考える上で大事なことは、美味しそうな食事をみせたところでお腹いっぱいの方に提供しても食べてもらえないこと。

お腹が空いているという緊急的なニーズがあってこそはじめて、問合せに繋がる。

そこに於いて、お客さんの考えが優先であり、お腹を減らさせるためには!なんて考えるのはナンセンスである(とはいえ、逆転の発想も必要だけど)。

売りたい商品を、売りたいように並べてはならない。
お腹が空きすぎているお客さんにアイス単品はなかなか売れないし、お腹がいっぱいのお客さんにカツ丼は売れない。

ペルソナ像を考えるべきといわれるのも、そこらへんに理由がある。
自分たちの商品を欲しがっているお客さんは、どんな方で、どういうときに、どうやれば来ていただけるのか、そしてどのメニューを買っていただけるのかが問題となっていく。

そんなお客さんが欲しがるだろうタイミングで情報を出すのがリスティング広告だし、ペルソナ像のお客さんが多い立地にレストランを建設するのがコンテンツSEOだ。

フリーランスになってからも立場は変わらない

今は事業会社のマーケ責任者という立場を終え、独立して広告代理店側に戻っているが、やりたいことはWEB集客の最適化だ。
リスティング広告を始めとするWEB広告なんて一つの解でしかない。

データを見よう。そして試そう。常にお客さんのことを考えよう。そのためにサイトは存在するのだから。

投稿者プロフィール

DAN爵
DAN爵
BtoBに特化したWEBマーケター。Twitterで生まれた時々毒舌、時々クソリプを繰り出すツイ廃。 小売り主任⇒WEB広告代理店リーダー⇒事業会社のWEBマーケティング責任者⇒独立。
リスティング広告がメインだったが、最近はコンテンツSEOが楽しくて仕方ないらしい。BtoBビジネスの企業にお邪魔しては、問い合わせ数を大幅に上昇させている・・・という噂がある。

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